本記事では以下の例文を用いて、視点がコロコロ変わる原因を見ていく。
まずは以下の例文を見ていただきたい。
例文⓪:基本例文
太郎は駅前の喫茶店に入った。少し緊張しているようだったが、彼女はそれに気づいていなかった。窓の外では雨が降り始めており、彼は昔のことを思い出していた。
この店は初めてだったので、落ち着かない気分になるのも無理はない。なぜなら、彼女は太郎がこの場所を嫌っていることを知っていたからだ。
一方、カウンターでは別の客が時計を気にしている。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じている。
彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
どうだろうか?一見、上手く書かれているようにも感じるが、どことなく読みにくく、わかりにくいようにも感じるのは気のせいだろうか?
そこで、以下ではタイプ別に例文⓪を検証し、修正していきたい。
なお、『視点がコロコロ変わる原因』に関する解説は、以下で詳しく記載しています。
例文をタイプ別に直してみる
例文⓪の視点人物は太郎、登場人物は太郎の他、彼女と別の客である。まずは登場人物別に視点を分解してみる。
例文⓪‘:視点を分解する(黒:太郎、赤:彼女、青:別の客)
太郎は駅前の喫茶店に入った。少し緊張しているようだったが、彼女はそれに気づいていなかった。窓の外では雨が降り始めており、彼は昔のことを思い出していた。
この店は初めてだったので、落ち着かない気分になるのも無理はない。なぜなら、彼女は太郎がこの場所を嫌っていることを知っていたからだ。
一方、カウンターでは別の客が時計を気にしている。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じている。
彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
上記のように例文⓪はそもそも視点が混在していることがわかる。では、視点を太郎に統一して書き直してみよう。
タイプ① 視点人物が分からなくなるケース
例文①:太郎の視点で描いてみる
太郎は駅前の喫茶店に入った。彼は少し緊張していたが、彼女には気づかれていないようだった。窓の外では雨が降り始めており、彼は昔のことを思い出していた。
太郎には彼女もこの店が初めてなので、落ち着かない気分になっているように見えた。なぜなら、彼女は太郎がこの場所を嫌っていることを知っていたからだ。
一方、カウンターでは別の客が時計を気にしているのがわかった。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じていたかもしれない。
彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
例文①では、太郎から見た彼女と別の客の様子を描いた。
これにより、例文⓪に比べて、幾分かわかりやすくなっているかもしれない。しかしながら、まだまだ読みにくいのには変わりはない。
では、次の項目を見てみよう。
タイプ② 視点人物が知らない情報を出してしまうケース
例文①における視点人物の知らない情報とは何か?
問題となるのは、『なぜなら、彼女は太郎がこの場所を嫌っていることを知っていたからだ』である。これは、彼女が太郎の内面を知っている、かつ太郎も彼女の内面を知っているという難解な書き方になっている。
それを踏まえて、例文②を見てみよう。
例文②:情報を整理する
太郎は駅前の喫茶店に入った。彼は少し緊張していたが、彼女には気づかれていないようだった。窓の外では雨が降り始めており、彼は昔のことを思い出していた。
太郎には彼女もこの店が初めてなので、落ち着かない気分になっているように見えた。しかし、彼女にこの場所を嫌っていることも知られたかもしれない。
一方、カウンターでは別の客が時計を気にしているのがわかった。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じていたかもしれない。
彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
例文②は、例文①における彼女が知っていたという書き方から、太郎の推測として描いてみた。これで、彼女の視点や内面を完全に排して、太郎の視点が立ち上がってきたとわかる。
タイプ③ 場面転換が曖昧なケース
例文②では、3場面(喫茶店の外、喫茶店の中、帰り道)が連続的に繋がっている。では場面の曖昧さを無くしていきたい。
例文③:場面を整理する
太郎は駅前の喫茶店に入った。彼は少し緊張していたが、彼女には気づかれていないようだった。席についた時、窓の外では雨が降り始めた。彼は昔のことを思い出していた。
太郎には彼女もこの店が初めてなので、落ち着かない気分になっているように見えた。しかし、彼女にこの場所を嫌っていることも知られたかもしれない。
一方、カウンターでは別の客が時計を気にしているのがわかった。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じていたかもしれない。
無言の時間が続いた後、二人は喫茶店の前で別々の道に進んだ。彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
例文③では、『席についた時』『無言の時間が続いた後、二人は喫茶店の前で別々の道に進んだ』という文章を添えて、時間と場所を明確にした。つまり場面転換では、登場人物がいつ、どこで、なにをしているかを描くことが重要だと言える。
タイプ④ 視点変更と視点誘導が混在しているケース
例文③までの文章では視点変更は行っていない。(すべて太郎の視点で書かれている)一方で、視点誘導は以下の部分で行われている。
『一方、カウンターでは別の客が時計を気にしているのがわかった』
では、上記を踏まえて例文④で書き替えてみよう。
例文④:視点誘導を明確にする
太郎は駅前の喫茶店に入った。彼は少し緊張していたが、彼女には気づかれていないようだった。席についた時、窓の外では雨が降り始めた。彼は昔のことを思い出していた。
太郎には彼女もこの店が初めてなので、落ち着かない気分になっているように見えた。しかし、彼女にこの場所を嫌っていることも知られたかもしれない。
太郎は彼女から視線を逸らして、奥のカウンターを見た。そこには、時計を気にしている別の客がいた。太郎はその視線に不安を覚え、早く帰りたいと思った。彼女もまた、今日は失敗だったと感じていたかもしれない。
無言の時間が続いた後、二人は喫茶店の前で別々の道に進んだ。彼は家路につきながら、もう会うことはないだろうと確信していた。
例文④は、喫茶店の席に座った太郎が奥のカウンターに視線を移した描写を追加した。これにより、太郎がどこからどこを見ているかがはっきりする。
このように、視点を扱うには――
『誰が、いつ、どこで、どこから、なにを、見ているのか』を明確にする必要がある。
まとめ
今回は、視点がコロコロ変わる原因を例文で検証した。
例文検証からわかることは、視点人物を固定し、『いつ、どこで、だれが、なにを』見ているかを明確にし、できれば『なぜ、どのように』を加えていくと分かりやすくなると考えられる。
皆さんも、本記事を参考に視点について考えてみてはいかがだろうか。筆者もまた、今一度、再確認していきたいと思う。
以上

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