小説の“設定”はどう書く?|読者に伝わる自然な見せ方とは

検証ラボ
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「設定は作ったのに、小説に活かせない」
「読者に世界観がうまく伝わらない」
──そんな悩みを抱える書き手もいるかもしれない。

小説における“設定”とは、物語の背景や世界のルール、人物の過去や関係性といった「見えない骨組み」。しかし、その設定を“どう書くか”によって、作品の印象は大きく変わることもある。

本記事では、小説における設定の自然な見せ方・描き方について、具体例と共に整理していく。「語らずに伝える」ための視点を、一緒に考えてみませんか?

設定は“土台”であり、“語り”ではない

小説の設定とは、世界観・時代背景・社会構造・登場人物の過去や関係性など、物語の下地となる情報群のことである。
しかし、それらをそのまま「語る=説明する」と、読者にとっては“読む負担”になる可能性も秘めている。
本項では、設定をあくまで「物語の中に自然に染み込ませるもの」にする3つの方法を紹介する。

設定を描く方法

  1. 会話の中で描く
    キャラクターの台詞の中に、設定の一部をにじませる方法。
    例:「また魔術試験か……今年こそは通りたい」
    解説:魔術制度と試験制度の存在が自然に伝わる。
  2. 行動で描く
    説明よりも“動作”や“反応”を通して設定を浮かび上がらせる方法。
    例:「銃声に反応して、彼はすぐ身を伏せた」
    解説:軍経験や過去が伝わる。
  3. 少しずつ描く
    設定は一度に出すと重くなるケースもある。そのため、読者が必要とするタイミングで分けて提示する方法も存在する。
    注意:“準備した順”ではなく“必要な順”に出すのが基本。

このように、設定はどのように描くか、どのタイミングで出すかを設計すると、より伝わりやすい表現になると期待できる。

地の文と会話文の割合について

設定を伝える際、地の文でまとめて説明するのか、会話や行動にまかせるのか──そのバランスは作品全体のテンポや雰囲気に直結する。

地の文は「正確に伝える」ために有効だが、多すぎると“情報の圧”になる。一方、会話は「自然に伝える」ことに向いているが、情報の深度は浅くなりがち。

理想は、“要点を地の文で整えつつ、(前項で述べた通り)会話や行動で補完する”設計。特に、序盤は会話・行動中心、中盤以降に地の文で補足、というリズムも有効だとも言えるかもしれない。

例文で見る設定描写

本項では、みなさんとともに、物語設定を描いていきたいと思う。まずは、以下の設定と例文①を見ていただきたい。

項目設定
主人公田中太郎(高校1年生)
時期9月
場所教室
状況文化祭の話し合い
他キャラクター鈴木裕子、北村武
例文①:設定を文章にしてみる
 田中太郎は高校一年生。只今、10月に開催される文化祭の実行委員をするために、教室でメンバー2人(鈴木裕子、北村武)と話し合いをしている。

上記では物語設定を2文に分けて記載している。これでも、しっかり伝わるがどこか殺風景に感じる人もいるかもしれない。
では、上記を踏まえて『①会話の中で描く』を実践してみよう。

例文②:設定を会話で描いてみる
 田中太郎は教室で話し合いをしている。
「10月の文化祭、どんな出し物にする?」
 田中がそう聞くと、鈴木裕子が、
「高1なんだし、展示とかでいいんじゃない」
 と言葉にする。すると北村武が、
「えー、それじゃあつまんないじゃん」
 と言い放つのだった。

例文②は、例文①をキャラクターの会話で描写したものである。すると、各種設定だけではなく、キャラクターの雰囲気や文化祭に対するスタンスも伝わるのではないだろうか。

しかしながら、冒頭の文章が少し端的に見えるかもしれない。そこで、『② 行動で描く』を加えてみよう。

例文③:設定を行動で描いてみる
 田中太郎は黒板の前に立ち、正面の二人に話しかける。
「10月の文化祭、どんな出し物にする?」
 田中がそう聞くと、鈴木裕子が、
「高1なんだし、展示とかでいいんじゃない」
 と言葉にする。すると北村武が、
「えー、それじゃあつまんないじゃん」
 と言い放つのだった。

例文③では、例文②における『田中太郎は教室で話し合いをしている』という文章を、田中の行動『黒板の前に立ち、正面の二人に話しかける』に置き換えてみた。
すると、彼らが教室にいることはさることながら、キャラクターの位置関係や、関係性が垣間見える。では、最後に『③ 少しずつ描く』を加えて完成させたいと思う。

例文④:設定を少しずつ描いてみる
 田中太郎は黒板の前に立ち、正面の二人に話しかける。
「どんな出し物にする?」
 田中がそう聞くと、鈴木裕子が、
「高1なんだし、展示とかでいいんじゃない」
 と言葉にする。すると北村武が、
「えー、まだ時間があるし、もっと面白いことをやろうよ」
 と言い放つ。すると鈴木が彼に睨みを利かせて言う。
「北村君。文化祭、いつか知ってるの?」
 しかし北村は、
「え?10月でしょ?」
 と、あっけらかんと答えるのだった。

例文④では、田中の冒頭のセリフ「10月の文化祭、どんな出し物にする?」を分解して、会話に含ませていることが分かる。
すると、田中の説明臭いセリフがスッキリして、他のキャラクターもより際立つように映っているのではないだろうか。

このように、設定描写はただ文章で書くだけではなく、会話や行動、そして登場させるタイミングを考えることで、自然と伝えられると期待できるだろう。

おわりに

今回は、“設定”をどう描くかという命題を、筆者なりに解釈し、みなさんにお届けした。作者としては、設定を細かく作れば、作るほど本文に書きこみたくなるのである。(自戒)

しかしながら、伝え方はさまざまある。ならば、より読者に楽しんでもらえるような書き方が好ましい。そのため筆者は、


  1. 会話の中で描く
  2. 行動で描く
  3. 少しずつ描く

が重要だと考えている。

しかしながら、設定描写にはまだまだ他にも手法があるかもしれない。そこで皆さんも、『自分に合った設定描写』を見つけてみてはいかがだろうか。

すると、あなただけの物語に仕上がっていくと期待できるから。

以上

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