小説の“文体”とは何か?|種類・ジャンル別の特徴と育て方を解説

創作ラボ
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小説を書いていて「自分の文体がない」と感じたことはありませんか?
あるいは、「なんだか文章が読みにくい」、「作品に統一感がない」といった違和感に悩んでいる方も多いかもしれない。

“文体”とは、文章のスタイルであり、作家の個性そのもの。それは、語彙の選び方、文の長さ、言葉のトーン、地の文と会話のバランスなど、細かな要素の積み重ねによって生まれるとも言える。

本記事では、小説における文体の意味と役割、そして確立していくための視点について解説していきたい。

文体の種類と使い分け

文体とは何か?そして、どこで使われ、どのような種類があるのか?

以下では、そんな問いに答えている。文体の定義、ジャンル、種類を知り、自分らしい文体を掴む一助になれば、幸いである。

文体とは何か?──“文の個性”のこと

小説における文体とは、作者の文章における“表現の癖”や“語りの型”を指す。それは単なる言葉遣いではなく、文章のリズム、視点、語り口、温度感、句読点の間などを含めた“スタイル全体”とも言えるかもしれない。
そのため、読者は無意識にその文体から、作家性や作品の雰囲気や深度を受け取っていると予想される。

文体とジャンルの関係

文体は、作品ジャンルや世界観に応じて自然と変わるケースがある。以下は、ジャンルと文体の関係をまとめた表である。

ジャンルタイプ概要
ミステリー客観的・論理的・簡素情報の整理に適する
恋愛小説主観的・叙情的 感情や繊細な心理描写に向く
青春もの主観的登場人物の葛藤や疾走感を伝える
文学作品叙情的・ミニマル読後の余韻や余白を重視
群像劇客観描写
+視点ごとの文体差
複数人物の視点や背景を描き分けるため、文体の多層性が重要になる

しかしながら、上記はあくまで傾向であり、法則ではない。そのため、ジャンルを問わず、作品により良い文体を選び取ることが重要だとも言えるだろう。

文体の種類(代表的な4タイプ)

作家固有の文体といえど、いくつかの種類も確かに存在する。以下では、代表的な文体を4つ紹介していく。

  • 客観的・説明的:事実を淡々と描写/論理的/感情抑制
     → 例:彼は立ち上がった。外は雨だった。
    上記のタイプは、現象や設定の解説に向く文体と言える。また直接的で、硬く冷たい印象もあるため、淡白なキャラクターや、連続的な動作(戦闘やスポーツなど)に用いると有効かもしれない。
  • 感情的・叙情的:比喩が多い/詩的/内面に寄る
     → 例:彼は椅子を蹴るように立ち上がった。雨は、泣きたくなるほど優しかった。
    感情的・叙情的な文体は、例文からも分かるように動作や物体に心情を乗せて、キャラクターの内面を映し出す効果が期待できる。
    また、ゆっくりとした動作や、行動のニュアンスを伝える時に役立つ文体だと言える。
  • 主観的・一人称的:語り手の感情・思考が強く反映
     → 例:あのときの僕は、ただ立ち上がることしかできなかった。
    この文体は、キャラクターの内面を深く掘り下げる作品に効果的だと考えられる。そのため純文学的、あるいはエッセイ的な文体と言えるかもしれない。
    また、三人称小説においても、あるキャラクターの内面を深く描きたいシーンで使うと有効だと予想される。
  • ミニマル・簡素:情報を極限まで削ぐ/余白重視
     → 例:彼は立った。雨。
    上記の文体は、作品全体で使うと非常に散文的で、いくつもの解釈が生まれる文体だと考えられる。
    しかしながら一文単位で用いると、読者に考える余地を与えたり、キャラクターの解釈しきれない思いを伝えたりするのに有効だとも言えるだろう。

上記のように、文体の種類は作品で選ぶのではなく、シーンによる使い分けが重要だと考えられる。また、その使い分けの機微こそが、作者固有の文体だとも言えるかもしれない。

筆者にとっての文体は?

私にとっての文体。それは、①客観的・説明的な文体を基本としながら、②から④の文体をシーンによって、あるいは物語全体の要素として取り入れたモノだと考えられる。

しかし、上記は狙って描いたわけではない。

あくまでも、物語の構造、描きたいシーン、伝えたいテーマなどを加味しながら、自ずと出来上がった(未だ途上ではあるが)ものだと推察される。

そこで一つ提案がある。

それは、『書くだけではなく、書き上げること』を意識してみてはどうだろうか、というものだ。
それは、10万字を越える物語でも、2000字のエッセイでも、500字の散文でも構わない。
自分が納得できる『結び』を描き、積み重ねることで固有の文体へと昇華していくと期待されるから。

おわりに

今回は、小説における文体についての概要や種類、さらには筆者の考察を述べていった。

文体は一朝一夕で手に入るものではない。しかし書き続けていれば、自分にとって気持ちのよい表現や、納得できる言葉遣いが蓄積されるのは、まぎれもない事実。
そして推敲すること、書き終えることをくり返し、僅かな変化を感じ取る。それこそが、文体を育てる旅そのものだと言えるかもしれない。

つまり、『結び』を意識して『書くだけではなく、書き上げること』。その積み重ねこそが近道。

さて、筆者もまだまだ旅の途中。皆さんも自分らしい文体を探す旅を始めてみてはいかがだろうか。本記事が、その一助となれば幸いである。

以上

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