小説における視点変更とは?種類と使い分けの考察

検証ラボ
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小説の読みにくさの原因として、「視点の揺れ」がよく挙げられる。とくに三人称で複数のキャラクターを描こうとしたとき、どこまでを“その人の目線”で描くのか、どこから地の文に戻るのか──その切り替えが曖昧だと、読者の混乱を招きやすい。

一方で、視点の変更は物語に奥行きを与え、構造的な深みや読者の発見を導く有効な技法でもある。

本記事では、「視点変更」の一般論と筆者なりの考えを整理していきたい。視点はただ移るのではない。構造として“設計されるもの”なのだ。と胸を張って言えるように。

一般論:視点切り替えの種類

「視点変更」は、大前提として「1シーン1視点」というものがある。これは、明確な切り替えタイミング(一行の空白など)が無いままに視点を切り替えると、読者は「誰の視点なのか?」という基本情報を見失ってしまうからである。
上記を踏まえ、一般論として以下のようなタイプを確認していこう。


  • 三人称限定視点の切り替え
    「太郎は――」から「花子は――」のように主語を切り替える手法
  • 三人称から主観への移行
    「太郎は――」から太郎の思いを描く手法
  • 三人称と一人称の混合使用
    「花子は――」から「――私は」のように視点人物が一人称で語る手法

上記の切り替えは見出し冒頭でも述べた通り、変更の“タイミング”や“境界“を曖昧にすると読者の混乱を招くケースもしばしばある。それを避けるためには、「1シーン1視点」や「段落冒頭で視点の手がかりを明示する」などのルールに注意を払うことが大事だと言える。

また、視点の変更は“演出のため”ではなく、構造やテーマを支える選択とも捉えることが出来る。言い換えれば、それはある出来事を誰に語らせるかは、誰に物語を委ねるかに等しいのである。

つまり、視点を切り替えるということは、読者の意識を移動させる“設計行為”であり、その設計が作品全体の統一感と読みやすさを左右するとも言えるだろう。

考察①:三人称限定視点の切り替え

筆者が考える三人称限定視点の切り替えのポイントは、視点変更後の1文目(もしくは2文目)など早い段階で“誰の”視点かを明記することにあると思う。

では、以下の例文を見てみよう。

例文①:三人称限定視点の切り替え
(設定:太郎が公園で花子を待っている様子)
 とある公園で太郎は花子が来るのを待っていた。しかし、なかなか来ない。連絡をしようにもスマホの電源が切れている。すると花子が汗を拭いながら走ってきた。

 花子は焦っていた。待ち合わせ時刻まであと僅か。遅れると連絡をしたかったが、なぜだか太郎と連絡が取れない。だから彼女は予定を繰り上げて、急いで来たのである。

上記の例文は、一行の空白を置いて、視点が太郎から花子に切り替わっているのである。

このように三人称限定視点での視点切り替えは、空白のあとすぐに主語を入れ替えることでスムーズに変更できると言えるだろう。

考察②:三人称から主観への移行

三人称から視点人物の主観に移行するケースを考える。本項ではまず例文から見ていこう。設定は考察①で用いた『太郎が公園で花子を待っている様子』をモチーフとする。

例文②:三人称から主観への移行
 とある公園で太郎は花子が来るのを待っていた。しかし、彼は焦っていた。花子に連絡しようにもスマホの電源が切れている。
 太郎はスマホを見ながら、なぜ充電しなかったのかと後悔した。しかし焦っても仕方がない。だから、じっと待つことにした。

上記では段落1で、太郎の状況を描き、段落2で太郎の動作から彼の思考に移行していると分析できる。これは、カメラで見ているモノが、太郎の全体(および状況)→太郎のスマホ→太郎の思考、というように見え方が周囲から内面へと段階的に移動しているとも言い換えられる。

このように三人称から視点人物の主観への移行は、カメラで見るものをどんどん拡大していくイメージで描いていくと、スムーズに移行できると言えるかもしれない。

考察③:三人称と一人称の混合使用

筆者は見出しの用途として、考察②『三人称から主観への移行』よりも長い時間(いわゆる独白などの回想シーン)を描きたい時に用いると有効だと考えている。
理由は、独白のシーンは視点が明確かつ『三人称から主観への移行』よりも深く内面を掘り下げられるからである。

では、『太郎が公園で花子を待っている様子』の例文を見てみよう。

例文③:三人称と一人称の混合使用
 花子は太郎を見つけて、手を振った。そして、彼女は彼に合うや否や事情を話す。
 ――今日、私は太郎と会いたくなかった。昨日の喧嘩で気まずかったから。でも、連絡が取れないと分かると、急に心配になった。だから、まだ私は太郎のことを……。

上記の例文では、「……」で文章を終えているが、本来ならばもう少し花子の内情を話してくれると期待できる。
一方、例文③を三人称限定視点の移行で描くと、「花子は太郎に会いたくなかったと話す。昨日の喧嘩が気まずかったからだそうだ」というように、何とも味気ない表現になるのは否めない。

このように三人称と一人称の混合使用は、ある視点人物の内面を深く掘り下げたい時や、回想シーンなど、物語の根幹にかかわるシーンで用いると効果的な演出になると考えられる。

おわりに

今回は小説における視点切り替えの一般論から、3つのパターンの考察について紐解いていった。
筆者は視点切り替え3パターンにおいて、以下のように使い分けている。


  • 三人称限定視点の切り替え:描く場所を変える、もしくは見える箇所を変えたい時
  • 三人称客観→主観の移行:その時々の考えや思いに触れたい時
  • 一人称と三人称の混合使用:回想シーンや、視点人物の内面を掘り下げたい時

このように、筆者は物語の流れにそって、切り替えのパターン(いわゆる演出)を使い分けていると考察している。

皆さんも、使いやすいパターン、もしくは演出したいシーンに合わせて視点切り替えの技法を使ってみてはいかがだろうか。
すると、きっと皆さんの描きたいシーンが浮かんでくるはず。

以上

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