小説の表現とは何か?感情・描写・行動を整理して考える

Creative Lab
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「小説の表現が大切だ」とよく言われるが、その意味は感覚的に語られることが多い。たとえば、以下のように言われているのではないだろうか。


・言い回しが上手い
・表現力がある
・描写がきれい


しかし実際には、表現が増えるほど文章が伝わらなくなるというのも事実

本記事では、小説の表現を「上手い言葉を書く技術」としてではなく、読者に想像させるための設計 として整理していく。

小説における「表現」とは何か?

まず、ここで扱う「表現」を定義しておきたい。
小説における表現とは、どこを読者に補完させるかを決めることだと、筆者は考えている。

つまり、情報をすべて説明するのではなく、感情をそのまま書くのか、行動ににじませるのか、情景を細かく描くのか、といった何を書いて、何を書かないかの選択にこそ表現が宿ると言えるかもしれない。

この視点に立つと、表現は「センス」ではなく、役割ごとに整理できるもの になる。

小説表現は4つに整理できる

小説の表現は、大きく次の4つの役割に分けて考えることができる。

① 内面を伝える表

人物の心理や感情を、読者に理解させるための表現。ただし小説では、感情を直接説明するほどかえって伝わりにくくなる場合も多い。
言葉にしない感情、本人も自覚していない揺れを、どう示すかが問われる領域である。

② 世界を立ち上げる表現

物語の舞台や空気感をつくる表現。
情景・背景・音・匂いなど、五感に関わる描写は、読者を「その場」に連れていく役割を持つ。重要なのは、すべてを描くことではなく、想像の起点を置くこと だ。

③ 物語を動かす表現

行動や動作、戦闘など、物語を前に進めるための表現。
テンポや緊張感、読み心地のリズムは、説明ではなく「動き」によって生まれる。物語が停滞していると感じるとき、多くの場合、この領域に原因がある。

④ 説明しない表現

感情を行動ににじませる。意味を情景に背負わせる。これは特定の技法というより、表現全体を横断する考え方 に近い。
説明を削り、読者の想像力を信頼するための領域だ。

表現の種類別に詳しく知りたい人へ

以下では、それぞれの表現領域について、より詳しく解説した記事をまとめている。必要なところから参照してほしい。

■ 人物の内面を伝える表現

感情や心理は、言葉にするほど平坦になることがある。

小説では、「どう感じているか」ではなく、「どう振る舞っているか」「何を避けているか」から内面を立ち上げることが多い。

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■ 世界を立ち上げる表現(描写)

情景や背景は、説明ではなく「空気」を伝えるために使われる。五感に触れる描写は、読者の記憶や経験と結びつき、物語を立体的にする。

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■ 物語を動かす表現

物語の速度は、文章量ではなく動きで決まる。行動や戦闘の描写は、物語の推進力そのものだ。

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説明しない表現の考察(例文付き)

説明しない表現とは何か?
その問いの答えは、本記事で取り上げた他の3項目を上手く用いることだと考えられる。百聞は一見に如かず、以下の例文を見ていただきたい。

例文⓪:基本例文
 武史はクリスマスのイルミネーションが光っている街を歩いていた。彼はそれを見ると、いつも楽しい気持ちになる。そして今日はチキンを食べようと思い始めた。

例文⓪では、武史が何をしていて、どう思ったのかが簡潔に伝わってくる。しかし、どちらかと言えば日記に近い表現だと思われる。(注:悪い表現では決してない)

では、武史の内面をもう少し描いてみると、どうなるだろうか?

例文①:内面を伝える表現を加えてみる
 武史はクリスマスのイルミネーションが光っている街を歩いていた。彼はいつの間にか口笛を吹いていた。そして今日はチキンを食べようと思い始めた。

例文①は、例文⓪における『彼はそれを見ると、いつも楽しい気持ちになる』を、『彼はいつの間にか口笛を吹いていた』に書き替えた。すると、『楽しい』と書かずとも武史の楽しい気持ちが伝わったのではないだろうか。

例文②:世界を立ち上げてみる
 赤と緑のライトが笑い声を誘っている。今日はクリスマス。武史は明るく彩られた街で、いつの間にか口笛を吹いていた。そして今日はチキンを食べようと思い始めた。

例文②は、例文①におけるクリスマスのイルミネーションという世界観を、『赤と緑のライト』『笑い声』『明るく彩られた街』と表現し、間接的に伝えていることがわかる。

最後に物語を動かしてみたらどうなるだろうか?

例文③:物語を動かしてみる
 赤と緑のライトが笑い声を誘っている。今日はクリスマス。武史は明るく彩られた街で、いつの間にか口笛を吹いていた。すると焼けたチキンの香りがした。武史は、それに誘われてスーパーへと吸い込まれていった。

例文③は、例文②に匂いの描写を追加し、それを起点に武史の行動を促している。上記3例文では、例文⓪における『イルミネーション』『楽しい気持ち』『チキンを食べる』という説明的な語句を、登場人物の内面で表現し、世界を立ち上げて、物語を動かすことで端的に書くこともなく伝えているとわかる。

つまり、作者の言葉で意味を説明するのではなく、登場人物の行動や置かれた状況そのものに、意味を語らせるという考え方である。

まとめ

今回は、小説の表現というテーマで筆者なりの考察を述べていった。表現とは読者の想像力を信頼する行為。紹介した4つはどれが最も重要という訳ではなく、すべての方法を使って物語を伝える意識が最も重要だと、筆者は考えている。

みなさんは、どんな小説の表現が好きですか?
技法を知ることで、物語の解像度がグッと上がることを期待している。

以上

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