「楽しみ」は、いろいろな感情の中でも特に豊かで、軽やかな広がりを持つ。旅立ちの前夜にじわりと膨らむ期待、好きな作家の新刊を手に取る瞬間の高揚、物語の続きを想像しながら眠りにつく夜――そのどれもが「楽しみ」という言葉で表すことができる。
しかし、気持ちを明確に表現しようとしているのに、「楽しみだ」「ワクワクする」以上の言葉がなかなか出てこない、という経験はないだろうか。
本記事では、気持ちを言葉にしたい人や自分の気持ちを確認したい人のために、「楽しみ」という感情の表現を掘り下げるものである。
楽しみの表現の使い分け
「楽しみ」という言葉は一つの感情を指している訳ではない。考えてみると、私たちは無意識の内にいくつかの種類に使い分けているとわかる。
- 未来への期待
「楽しみ」は未来を表す言葉として使われる。たとえば、「会えるのが楽しみだ」「公演が楽しみだ」という用法がそれにあたる。
この場合、まだ訪れていない出来事に意識を向けており、その到来を待ち望む感情になっているとわかる。 - 現在の楽しみ
「楽しみ」には現在進行する喜びの源泉を指すこともある。「読書が楽しみだ」「料理が楽しみだ」という言い方では、生きがいや喜びの拠り所となっているケースもある。この用法における「楽しみ」は、未来ではなく、日常に根を張った感情だと言える。 - 余韻や回顧
「楽しみ」は体験の余韻や回顧として現れることもある。「あの旅は楽しみだった」という文脈では、過去の喜ばしい記憶が現在の自分を温めている状態を指す。
このように、「楽しみ」という言葉は未来・現在・過去という時間軸をまたいで使われる間口の広い感情語である。
この言葉を扱う時、あるいは読み手として出会う時、それがどの時間軸で感じる「楽しみ」なのかを意識すると、表現や読解の解像度を高めると言えるだろう。
楽しみの表現は時系列でみるとわかりやすい
本項では、同じ登場人物(武夫)が、一つの出来事(ライブ)に対する『楽しみ』を描き分けてみたいと思う。
例文①:未来への期待
武夫はそわそわしていた。それもそのはず、待ちに待ったライブが明日に迫っているのだ。そんな彼は帰り道、どこか自分の足が軽く感じていた。
例文①では、武夫の気持ち(そわそわ)と、帰り道の描写(軽く感じる)で楽しみにしてる様子を表しているとわかる。
例文②:現在の楽しみ
会場は熱気に包まれていた。光が視界を支配し、爆音が脳裏を吹き飛ばす。武夫も群衆に紛れて、我を忘れて声を上げていた。
例文②では、会場の様子を中心に描きながら、武夫の行動を見せている。すると、武夫が現在進行形で楽しんでいることが伝わるのではないだろうか。
例文③:余韻や回顧
武夫の頭には、未だに光と音のグラデーションが描かれている。彼はそんな様子に浸りながら、冷たいビールを飲み干した。すると、いつも以上に爽快で、熱気を柔らかく冷ましていった。
例文③は、武夫がライブを思い出しながら、ビールを楽しんでいるシーンである。ここでは『爽快』『熱気』など温度にまつわる言葉と共に『楽しみ』の余韻を描いている。
このように、『楽しみ』の表現は時系列に応じた登場人物の心境を言葉にすると、より伝わりやすくなると推察される。
また、例文中では『楽しみ』という言葉を使わなかったが、『楽しみだ』『楽しかった』などを使っても十分伝わると考えられる。
まとめ
今回は、楽しみの表現と題して解説と例文を使って述べていった。
楽しみの表現は、喜怒哀楽の中で最もライブ感のある感情語だと思われる。そのため、少し前、今、少し後の心境を軽めに描いてみると伝わりやすい。
さて、みなさん。
今、どんなことを楽しみにしていますか?
そんな心境を軽めに描いてみると、表現も気持ちも鮮明になるかもしれない。
以上
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