キャラクター設定の“方法論”では語れないこと

創作構造ラボ

はじめに

「キャラクター設定には方法がある」──これは事実である。
欲望、トラウマ、行動原理、関係性など……多くの技術書や指南書が、その“作り方”を教えてくれる。
でも、その通りに設定を組み立てても、なぜだか小説という舞台で“キャラクター“が動かないこともある。キャラクターが作れても、書けるかどうかはまた別の話。

この記事では、設定方法を一度受け止めた上で、「それでも書けない」と感じた時にこそ生まれる問いに焦点を当てて掘り下げていく。

一般論:キャラクター設定の基本要素

キャラクター設定に関する一般的なフレームワークとして、以下のような構成要素がある。


  • 目的(何を行うか)
  • 欲望(何を求めているか)
  • 恐怖(何を避けようとしているか)
  • 行動原理(どのように振る舞うか)
  • 価値観(何を正しいと信じているか)
  • 背景や過去(なぜそうなったのか)

キャラクターは上記を言語化し、設定表にまとめておくことで “設計”できる。すると、物語の途中でキャラクターがブレることも減り、読者に伝わりやすくもなる。
こうした技法は、多くのシナリオライティング書籍にも共通して登場する基本であり、一定の効果をもたらすことは言うまでもない。

一方で綿密にキャラクターを創作しても、小説という舞台で上手く動かないケースもある。そこで次項ではキャラクターが上手く動かない理由を掘り下げたい。

考察①:なぜキャラクターが上手く動かないのか?

まず、見出しの問いの結論を述べておきたい。それはキャラクターの目的や信念の欠如である。例えば、「実家を出たい青年の話」を書くとしよう。この場合、キャラクター(以下、主人公)の目的は以下の理由が考えられる。


  1. 両親との仲違い
  2. 一人暮らしへの憧れ
  3. 自分の道を切り開くため

では、上記に基づいて考えてみよう。

1.の場合、主人公は親と離れることを目的としている。そのため、実家から出た時点で目的が達成され、物語を続けるには作中で新たな目的を創出する必要がある。つまり、作者は都度、主人公に目的を与える立場となり、主人公が主体的に動かない理由の一つとなってしまう。

2.の場合も、1.と同様な状況に陥るかもしれない。それは一人暮らしを始めた段階で目的が達成されてしまうからである。一方で、1.とは違い、憧れが目的の一つとなっているため、その他のキャラクターや舞台環境によって目的が自然発生するケースも考えられる。

3.の場合、すでに主人公が強い目的(もしくは強い信念)を持っていると考えられる。そのため、作者は主人公に舞台を設置してやるだけで、自ら動き出すと言えるだろう。

上記より、キャラクター(特に主人公)の動きは、作者による目的や信念の深堀りによって動き出すか否かが決まると考察できる。

考察②:どのように創ればいいのか?

キャラクターにはさまざまなタイプが存在する。そのため、必ずしも前項の③のようなキャラクターとは限らないのである。

では、どのように創ればいいのか?

筆者は以下の2つがあるのではないかと考えている。

  • キャラクターに強い目的を持たせる

例えば、ワンピースのルフィーには「海賊王になる」という強い目的がある。またドラゴンボールの孫悟空には「強い者と戦いたい」という欲望にも似た強い目的がある。

上記のキャラクターの特徴は、目的に対して従順で、その理由を疑うことがないという点である。そのため、作者はキャラクターのために舞台を設置し、キャラクターのために困難を用意すれば物語となるのである。

  • 他のキャラクターや物語設定から目的を与えられる

このケースでは、物語冒頭におけるキャラクターの目的は人から与えられたもの、もしくは状況によって目的が変わってゆくものと考えられる。

例えば、スラムダンクの桜木花道は当初、春子(ヒロイン)に気に入られるためにバスケ部に入部する。そこで流川(ライバル)と出会い、バスケットに魅せられる。そして最終的に彼の目的はバスケが上手くなること、チームが勝つことへと昇華してゆく。

上記はヒロインによって最初の目的が与えられ、ライバルや仲間によって目的がスケールアップしていく方法だと言えるかもしれない。

他にも鋼の錬金術師のエドワード・エルリックの例もある。彼は母親の人体錬成に失敗し、自身の体の一部と弟の体のすべてを失ってしまう。そして自分たちの体を取り戻すため、方法を探し始める。その中で賢者の石を知り、その作り方を知り、その裏にある巨大な陰謀にまで辿り着く。

この例では探求するという目的から始まり、真相に近づくにつれてキャラクターの目的が変わっていくケースだと言える。

上記の2つはどちらも、作中でキャラクターは他のキャラクターや物語設定から目的を見出され、キャラクターの信念によって達成していくと推察される。

つまり、キャラクターを作るためには一般的な方法論における目的と信念の深堀りをし、キャラクター自身、もしくは作中における外部情報からキャラクターを浮かび上がらせることが大切ではないかと考えられる。

おわりに

今回は、キャラクター創りにおける一般論と筆者の考察を述べた。

キャラクター創りには、まず目的と信念の深堀りをし、自ら目的を持っているのか、外から与えられるのかを検討する必要があると考えられる。

本記事が皆さんのキャラクター創りの一助になれば、筆者は嬉しく思う。

以上

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